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NO。77 相続時精算課税制度の留意点  (2003.4.21)
 
 平成15年度の税制改正案に「相続税と贈与税の一体的精算制度(仮称:相続時精算課税制度)が盛り込まれました。現行の単純贈与に対して、新方式は生前贈与をしやすくする画期的な制度となりました。
 超高齢化が進むなか、金融資産の大半を保有している高齢者が長生きの不安に備えお金をしっかりと抱え込み、さらに
老老相続」という言葉があるように相続人が70才を超える場合も珍しくなく、お金は若い世代に循環することなく高齢者のお財布に滞留し続けているのです。
 この滞留しているお金を若年層へ譲りやすくし、若い世代の住宅投資や消費喚起につなげ、低迷する日本経済復活の起爆剤にしたいとの狙いがあるのです。

 アメリカにおいてはブッシュ政権の大型減税で遺産税(日本の相続税にあたります)は10年後に向けて段階的廃止が決まっており、欧米先進国では相続税は廃止・縮小が流れになりつつあるのです。

 現行方式の「単純贈与」と新方式の「生前贈与」を比較してみました。
 新方式:生前贈与 (選択) 現行方式:単純贈与
相続税と一体的精算 渡し切り贈与
税 率 一率 20% 最高50%
6段階・累進課税
非課税枠 2500万円
住宅取得資金は3500万円
年110万円
住宅取得資金は550万円
申 告 非課税枠内でも申告必要 非課税枠内は申告不要
 新方式の特徴・要件は次の通りです。 
  ・65才以上の親から20才以上の子(代襲相続人含む)への生前贈与に対し
  ・贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はなし
  ・住宅取得資金の贈与は3年間の特例で1000万円上乗せして3000万円
  ・住宅取得資金の贈与の場合は親の年齢制限なし
  ・いったん支払った贈与税額は親の死亡時に相続税と精算
  ・現行方式も残り、どちらを選ぶかは贈与を受ける人の選択
  ・この選択は、最初の贈与の際に届け出、相続時まで継続して適用される
  ・この選択は、贈与者である父、母、ごとに選択できる
  ・現行の住宅取得資金の550万非課税枠は3年間存続
 
 現行の単純贈与では1年の非課税枠は小さいですが、渡し切りで相続財産を減らす効果があります。できるだけ長期間にわたって、子や孫などのできるだけ頭数多くの人に贈与することで相続対策として効果が出ます。
 新しい方式の生前贈与は、大型の資産移転を考える際に効果を発揮します。2500万円の非課税枠を超えた部分には取りあえず贈与税を払っておき相続時に精算するとして、相続時の遺産分割での争いを事前に防止するため、事業の後継者に自社株や事業用資産を贈与してしまっておく、子供が多い場合などは生前にご自身の意思で遺産分割を終えてしまうことができるのです。
 
 留意しなければいけない点がいくつかあります。

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生前贈与をした財産の相続時の評価は生前贈与した時の価額で計算されることです。まだまだデフレが続き、株式や土地を贈与はしたけれど相続時に大きく値を下げていたら大変ですね。 A大型の資産移転で土地や建物を贈与する場合は、将来値上がりが予想できる物件や、家賃収入がある収益物件などを贈与しておくのが得策といえるでしょう。また、B動産を贈与した場合は相続時の取り扱いと違い不動産取得税や登録免許税が必要です
 
 これまで贈与は国として把握しにくいのが実態であり、現金の贈与は事実上フリーパスでしたが、
C新方式を選択し届出書を出した場合は二度と撤回できず、単純贈与の恩典は放棄になり、2500万円を超えた場合はすべて20%の贈与税がかかり相続時に精算されるとになります。勿論、もともと相続税かからない財産範囲の人は、これまで贈与税が高いので躊躇していたお子様への財産移転が思い切ってできるようになるのですが、Dもともと相続税がかからないと思っていて生前贈与をしたけれど将来相続税の基礎控除額が引き下げられて相続時に精算してみると税金がかかってしまうこともあるかもしれません。
 そして財産を譲れば感謝されますが、毎年贈与して毎年感謝してもらうか、一度に贈与して一回限りの大感謝をしてもらうか、それとも相続時まで抱え込んでいくか、E「金の切れ目が縁の切れ目」にならないように。

 上手に知恵を出して活用すれば大変素晴らしい制度です。しかし、すべての皆さまに取りベストかは疑問も残ります。
 「こんなはずではなかった」と後々嘆くことがないように、慎重に!慎重に!


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