NO。302 円相場急騰と円キャリー取引 19.8.20

 米国のサブプライムローン低所得者向け住宅融資)問題に端を発した信用リスク不安の影響が広がり円相場は急騰しています。17日の東京外国為替市場は一時、1ドル=112円78銭と昨年6月以来約1年2か月ぶりとなる1ドル=112円台まで上昇しました。
 
欧米のヘッジファンドなどがリスクの高い投資を減らそうと、低金利の円を借りて高金利の外国通貨で運用する「円キャリー取引」を解消するため、円を買う動きを強めているのが一因であり、「円高基調が当面続く」との見方が出ています。

 「円キャリー取引」とは低金利で割安な円を調達し、それをドルなど金利の高い国の通貨に換えて高い収益が期待できる株や債券などに投資する手法のことで、主に海外のヘッジファンドによって行われており、低金利国の通貨で投資資金を調達し、それを高いリターンが期待できる国で運用する通貨間の金利差を利用した取引です彼らの投資対象は、株式、債券、商品、不動産など非常に多岐に亘っていますが、昨年については、円キャリートレードで調達した資金の多くが商品市場へと向けられ、原油や金などの商品相場が大きく押し上げられることとなりました。
 しかし、「円キャリー取引」が行われる条件としては、円が低金利だからということだけではなく、将来的に為替相場が円安に振れる可能性が高いという見方ができることも必要になります。なぜなら、「円キャリートレード」は、円を外貨に換える時点の為替相場と、その外貨を再び円に換える時点の為替相場との為替差益をも狙う取引だからなのです。
即ち、低金利で資金調達ができ、なおかつ、その通貨の相場変動による差益をも狙えるという2つの妙味があるからこそ、ヘッジファンドらはキャリートレードに取り組むのです。
 為替市場で円キャリー取引が活発化していったのは、1996年頃からです。その背景としては、バブル崩壊によって日本の低金利状態が長期化するであろうとの見方が広がり、また米国が為替政策を「ドル高政策」へと転換したことなどが挙げられます。
 ドル/円相場は1995年4月19日に史上最安値79円75銭を記録しました。日本ではバブル崩壊後の景気低迷から低金利状態が続くとの見方が支配的となっていましたので、翌年以降に世界中の投資家らが「円キャリー取引」を活発化させました。大きな為替差益も得られると期待できたからです。その結果、ドル/円は1998年8月には147円64銭にまで上昇しました。
 しかし、1998年9月には、円キャリー取引を利用して新興国市場に巨額投資を行っていた大手ヘッジファンドが破綻し、それをきっかけにして円キャリートレードの解消(ドル売り・円買い)に動き始めたため、ドル/円は10月初旬に111円台にまで急落する展開となりました。

 
円キャリー取引による資金は、貿易などの実需を伴わない逃げ足の早い資金であり、内外の金利差縮小や外貨建て資産の暴落などをきっかけに、一気に資金が逃げ出し、市場が混乱する恐れも強いのです。今回もまた、歴史は繰り返す。市場に積み上げられてきたポジションが一斉に解消される事態となり、為替相場が急激な変動に見舞われることになったのです。